
次、弁理士試験 短答 過去問 令和7年度【特許/実案】10 枝3です
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弁理士試験 短答 過去問 令和7年度【特許/実案】10
【特許・実用新案】10
特許法第93条に定める裁定(いわゆる公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)に関する以下の事例について、次の1~5のうち、正しいものはどれか。なお、1~5はそれぞれ独立しているものとする。また、事例や1~5に示されていない事実をあえて仮定する必要はない。
【事例】甲は、乙の有する特許権に係る特許発明の実施は公共の利益のために特に必要であると考え、その特許発明の実施をするために、乙との間で、その特許権についての通常実施権の許諾について協議をした。しかし、通常実施権の許諾に関する条件が整わなかったため、協議は成立しなかった。
1 甲は、特許庁長官に対し特許法第93条第2項に定める裁定を請求することができる。
2 甲乙間の協議が成立しなかったのは、甲の提示する対価が低額であったためであり、乙は、対価の額次第では通常実施権を許諾してもよいと考えた。この場合、乙は、特許法第93条第2項に定める裁定を請求することができる。
3 特許法第93条第2項に定める裁定の請求がなされ、その後、通常実施権を設定すべき旨の裁定がなされたが、当該裁定で定められた対価の額が低かったため、乙はこれを不服とし、訴えを提起した。この場合、乙は、特許庁長官を被告としなければならない。
4 特許法第93条第2項に定める裁定の請求がなされ、その後、通常実施権を設定すべき旨の裁定がなされた。しかし、甲が当該裁定で定める支払の時期までに対価(対価を定期に又は分割して支払うべきときは、その最初に支払うべき分)を支払わず、又供託もしないときは、通常実施権を設定すべき旨の裁定はその効力を失う。
5 特許法第93条第2項に定める裁定の請求がなされ、その後、通常実施権を設定すべき旨の裁定がなされた。この場合、甲は、乙の承諾を得れば、実施の事業とともにする場合でなくても、当該通常実施権を他者に移転することができる。
枝3
【事例】甲は、乙の有する特許権に係る特許発明の実施は公共の利益のために特に必要であると考え、その特許発明の実施をするために、乙との間で、その特許権についての通常実施権の許諾について協議をした。しかし、通常実施権の許諾に関する条件が整わなかったため、協議は成立しなかった。
3 特許法第93条第2項に定める裁定の請求がなされ、その後、通常実施権を設定すべき旨の裁定がなされたが、当該裁定で定められた対価の額が低かったため、乙はこれを不服とし、訴えを提起した。この場合、乙は、特許庁長官を被告としなければならない。

たしか対価の額に対する不服申立だけ別立てだったよね?
お金の争いは当事者間だったような・・・

はい、そうです。
裁定に対する不服申立は、裁定そのもの(対価以外)に対する不服申立と、対価の額に対する不服申立と2パターンに分けられるんでしたよね。

そうそう。条文でどうなっていたっけ?

条文で確認してみましょう。
裁定そのもの(対価以外)に対する不服申立=91条の2
対価の額に対する不服申立=183条
(裁定についての不服の理由の制限)
第九十一条の二 第八十三条第二項の規定による裁定についての行政不服審査法の規定による審査請求においては、その裁定で定める対価についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。(対価の額についての訴え)
第百八十三条 第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項又は第九十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
2 前項の訴えは、裁定の謄本の送達があつた日から六月を経過した後は、提起することができない。

裁定そのもの(対価以外)に対する不服申立は、行政処分に対する不服申立となるんでしたね(91条の2)。
裁定で定める対価の額に対する不服申立は、相手方を被告として訴訟を提起するんでしたね(183条)。

ということは、特許庁長官を被告とするのが×だよね

はい、そうなります。
被告は特許庁長官では無く、相手方の甲となります。
対価の額は、当事者間で争わせることが望ましい為です(お金の問題なので、行政処分がおかしいとかそういうのではないので、特許庁長官や経済産業大臣は関係ナシです)

93条裁定でこの条文って引用しているんだっけ?

そうでした!
最後に念のため確認しておきましょう。
93条3項で準用アリです。
(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
3 第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。

従って、答え×です。
被告は特許庁長官では無く、相手方の甲となるためです。
- 3 特許法第93条第2項に定める裁定の請求がなされ、その後、通常実施権を設定すべき旨の裁定がなされたが、当該裁定で定められた対価の額が低かったため、乙はこれを不服とし、訴えを提起した。この場合、乙は、特許庁長官を被告としなければならない。
- 答え ×
- 理由 被告は特許庁長官では無く、相手方の甲となるため

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